伊達要一@とうきょうDD954の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

今日のはてブ(2017/01/17)

昔、労働安全衛生法関係のところでヤバい状態を放置していた現場にブチ切れて部門を巻き込んだ大騒ぎに発展させた前科があります。伊達要一です。
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本命は36協定違反隠しのヤミ残業

過去何回かこのネタは取り上げてきましたが、いよいよもって大事になって参りました。
(過去の関連記事は末尾にまとめて掲載します)

JRA、電通の競争入札参加停止 違法長時間労働で措置:朝日新聞デジタル

事前にこういった規定を導入していたクライアントも当然あるだろうし、36協定違反隠しのヤミ残業問題はより一層波紋を広げそう。

2017/01/17 14:33

昨年末に電通の石井社長が沈む船から逃げ出す鼠よろしく辞任を表明したんですが、このあたりの入札指名停止なんかも関係しているとようやく気づきました。このニュースを受けていわゆるお役所関係の入札公告とかをざっと眺めたんですけど、確かに労働者保護法令違反を理由に入札から排除する例は結構ありますね。

例えば、東京労働局から出ている「平成27年度 墨田合同庁舎・町田地方合同庁舎 交通誘導業務委託」だと以下のような文言が記載されています。

2 競争入札に参加する者に必要な資格に関する事項
次の各号の要件を全て満たしている者であること。
(中略)
(7)過去 3 年間に、労働基準法労働安全衛生法最低賃金法、職業安定法、労働者派遣法などの労働者保護法令の違反で司法処分に付されたことがないこと。

平成27年度 墨田合同庁舎・町田地方合同庁舎 交通誘導業務委託

別件で国土交通省関東地方整備局では具体的に業者を名指しで指名停止措置をかけていたりもします。

指名停止措置の概要
(中略)
3.指名停止措置の範囲:関東地方整備局管内

4.事実概要
 当該業者の代表取締役は、法定の除外事由がないのに、同社の労働者に対し、法定労働時間を超えて時間外労働させたことなどから、労働基準法に違反するとして平成26年1月8日付けで常陸太田簡易裁判所から罰金20万円の略式命令を受け、当該命令が同月30日に確定したことが、建設業許可部局の監督処分により判明した。
 
5.指名停止措置理由
 有資格業者である当該業者の代表取締役労働基準法に違反したことは「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」(昭和59年 3月29日付け建設省厚第91号)及び「地方整備局(港湾空港関係)所掌の工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」(昭和59年3月31日付け港管第927号)別表第2第15号(不正又は不誠実な行為)に該当する。

国土交通省関東地方整備局 指名停止措置について

地方自治体なんかでも同様の事例は結構あるようですね。抜書が面倒なのでリンクにしますが赤穂市では明文化されたものがWeb上に転がっています。

今回、検察送致だけの状態で適用したのはかなり動きが早いですが、この後起訴され裁判となって処分が確定した場合お役所関係の案件について軒並み入札から排除されることが予想されます。1ヶ月の指名停止は短いようで結構大きくて、現状取り扱っているような案件でも取り消しになったりするわけで、電通としてはそれなりに痛手を被ることになるでしょう。冒頭石井社長が辞意表明という話をしましたが、本件に関する管理責任について株主代表訴訟を受けたりすることも含めて考えるとまさに逃げ出す頭の黒い鼠というのが当てはまるの感ありといったところです。

この動きですけど、最終的には2020年に開催される東京オリンピックに関するところにも関わってくるんじゃないかと密かに思っています。現状では電通の扱いだそうですが、この後裁判で処分が出たときに当然大々的に報道されることが予想されるわけでそのときに維持出来るかどうかですね。法的な部分については恐らく逃げが打てたとしても当局としては面倒を避けるという意味で扱いを外すなんてことも出てくるんじゃないでしょうか。まあ、国内で他に受けられるであろう博報堂も急に振られてもというのはあるでしょうから、現実的には微妙なところでしょうか。よくわかりません。

で、東京労働局や労働基準局絡みの動きです。
過去の記事でも少し書きましたが、今回の事件について当局としては単純な36協定違反で済ませるつもりは毛頭なくて本命は36協定違反「隠し」のヤミ残業やタイムカード等改竄のところでとことんまでやることを考えているように思えます。今回のケースで見えてきたわけですが、36協定違反に対して本来法に基づく対応をせずにヤミ残業やタイムカード等の改竄という犯罪行為をするインセンティブがそれなりにあるんですね。過去当局としては36協定違反を中心に取り締まっていたという経緯もあり書面上整った状態になっていれば良いような空気になっていたところに、思いっきり爆弾を投げ込んだ感があります。それで強制捜査が入って改竄されている可能性が高いタイムカードと入退館記録という「宝の山」を拾われてしまったわけで。

年末の検察送致からマスメディアへ当局サイドからリークされている情報が色々と出回っているわけですが、上記の「宝の山」を用いて追加でヤミ残業やタイムカード等改竄のところにつき、検察送致する自信があるという傍証ではないかと考えます。こちらでも法人として検察送致からの起訴・裁判・処分のコースを辿るとなると相当な数の役員や幹部職員が立件される可能性があります。
それこそ、今回の事件で犠牲になった方の所属していた部署だけではなくて全社的に横行していたとなればほぼ全社レベルで立件対象者が出てそのうち悪質なものを随時立件することになるのではないかと思われます。

労働法関係で刑務所にブチ込むなんてところまで持っていくのは現実的じゃない*1けど、晴れてゼンカモンであります。社内の処分でどのくらいパージされるかまでは電通の社内事情になるんでしょうけど、最低でもお役所関係の案件に関しては本件に関して無傷の人間を持ってこないと立場的に辛いことになるでしょう。

無責任な立場で言えばもうここまで来たらとことんまでやるしか無いわけですが、電通側が当局に恭順を示すタマとして上で書いたような東京オリンピックからの撤退も起きるのかもしれませんね。


電通事件に関する過去の記事)
yohichidate.hatenablog.com
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*1:本件に関して適用されるであろう罰則は「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」であるため、恐らくは罰金刑で懲役だったとしても量刑相場として執行猶予はつく可能性が極めて高い