伊達要一@とうきょうDD954の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

今日のはてブ(2017/11/07)

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久々のはてブです。これからはもう少し頻度を上げたいところですが、はてさてどうなることやら。
それで、経済誌のオンラインメディアはそれなりにどこも注力していることもあって、それなりに追っかけているんですが日経ビジネスオンラインの「コンビニ大試練」のシリーズはかなり良い出来ですね。というわけで今日はこちらの記事からはてブを拾いました。

ファミマ社長「コンビニは間違いなく飽和状態」:日経ビジネスオンライン

フランチャイザー側から「飽和状態」という言葉が明確に出たというのは興味深い。コンビニの特性をどのように方向転換していくかが生き残りの鍵かと思う次第。

2017/11/07 12:27

非常に興味深いインタビューです。若干食い足りない部分はあるけども「飽和状態」という言葉をフランチャイザー(本部)側のトップが発したということは注目に値するでしょう。
そもそも論としてコンビニエンスストアでよくある「ドミナント出店」*1自体が、ほぼ本部サイドの都合で行われているわけですよね。ここまであちらこちらにコンビニがあるような状況下では、新規出店イコール既存店舗の減収に繋がるわけです。本部側としては既存店舗の売上が減ったとしてもトータルでプラスになれば損をしない計算だけども、フランチャイジー(加盟店)側としてはたまったものじゃない。そりゃあ、加盟店側は利益を確保するためにギリギリの人員・賃金で運営を進めたいでしょう。
要員確保難の問題は、本来オペレーションの冗長性*2を確保した上で最低限確保すべきところ、売上的な面で確保困難になっていることにあるわけです。要員の数も絞らないといけないし、賃金も抑えないとやっていけない。
冷酷な言い方をすれば、そういった本部の動きを把握出来ずに手を出した加盟店側の経営的な無能なわけで、あまり同情する気にもなれないけども、無為無策で拡大を続ける本部側の責任はしっかりと追求しなきゃならないと思います。


それで、インタビューの中身を見ていくと、この社長の人的資源に対する理解についてはまだまだ甘いと言わざるを得ないですね。

――沢田社長はファミマ入社前、小売業や外食産業の支援会社であるリヴァンプで代表を務めていました。さらにその前の1990年代後半からは、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングでも副社長を務めています。小売業の経験は長いはずですが、コンビニの現場における人手不足は予見していなかったのですか。


沢田:分からなかったですよね。リヴァンプで僕が携わらせてもらった案件って、(クリスピー・クリーム・ドーナツなど)ブランド力で人材をひきつける企業が多かったのです。労働力が不足する感覚はありませんでした。


 ユニクロ時代も同じです。社会問題として表面化しているのは最近ですよね。だからこそ、僕もファミマに来て現場に足を運んで話を聞いてみるまで、ここまで大変な事態になっているんだとは気づきませんでした。


 いま、現場ではスタッフが集まらず、仮に採用できても定着しないんです。かつ(最低賃金の上昇で)人件費も上がっている。派遣スタッフを入れたりして、店舗はなんとか持ちこたえているけど、ボディーブローとして間違いなく、じわじわと体力が落ちてきているのは分かります。


 だからもうとにかく全社を挙げて、店舗運営に関わる細々とした作業をシンプルにしなきゃいけない。だから客層キーをなくし、また宅配便の分厚い受け付けマニュアルも「ふざけるな、誰が読むんだ」と発破をかけて変えているんです。

ファミマ社長「コンビニは間違いなく飽和状態」:日経ビジネスオンライン

伊藤忠にバブルの手前くらいに入社したクチということでいうと、ちょうどあの頃の狂乱じみた人材獲得競争を少なくとも見聞きはしている筈なんですよね。その後長いこと人的資源の確保が極めて容易な時代が続いたとはいえ、この状況がいつまでも続くということを思っていたとするならば、ちょっと教養が足りないと言わざるを得ないでしょう。
だいたい、クリスピー・クリーム・ドーナツユニクロにしても、オペレーションにおける最末端では多くの要員を用いなければならないリテール事業なわけで「表面化しているのは最近」なんて他人事のようなことをいう神経はちょっと理解し難いですね。

先日人的資源確保という話に絡んで、更新にこんなことを書きました。

そもそも論の話としてですが、本質的に企業はそうそう簡単に望む要員を確保出来るもんじゃないんですよね。これは景況感が云々ではなくて、時代に応じて色々な苦労があったわけです。戦前で言えば「職工」と呼ばれた現場要員がちょっとでも賃金の良い職場を渡り歩くがために、要員が安定して確保出来ないという問題があったり、戦後で言えば高度経済成長の時代に地方から(新制)中学校を卒業したばかりの少年少女を雇用してイチから教育して*3要員として仕立てるということをせざるを得なかった。バブル景気とその終焉から数年間は強烈な人手不足で潰れる建設会社が多発したなんて話も有名です。企業にとって要員確保が容易な時代というのがノーマルな状態ではないということは、改めて認識しておかねばならないでしょう。

本日の更新(2017/11/02) - 伊達要一の書棚と雑記

いわゆる「失われた二十年」のなかで、もっとも「失われた」ものは何か? と問われれば「事業の興亡に応じてどのように人的資源を確保し教育することで要員に充当し、適性な規模を維持するか」ということに対する意識付けだと思っています。
人的資源の確保が歴史的に特筆すべきレベルで容易だった時代が人事や採用部門を腐らせて、教育訓練の部分を外注化・OJTという名の現場丸投げをすることで教育部門を崩壊させた結果、中途採用市場からの人員確保をもって要員の維持をすることしか出来ない人事・採用・教育部門が出来上がったわけです。
言うまでもなくこんな部門は最初にコストカットしてしまうのが適当と考えるわけですが、寡聞にしてそのような話は聞きません。そこに「けしからん」と云うケーザイヒョーロンカもロクに居ないあたり、日本には本質的な意味で「歴史」というものを学んでいる連中がロクに居ないんでしょう。嘆かわしい話です。

サービス業は究極的には対抗する相手よりも多くの資源を顧客にぶつけることで勝利を目指すものです。そこには当然人的資源も含まれる。
ところが多くの経営者は「失われた二十年」のなかで、勝利を目指すよりも消耗を抑制することだけを考えるような動きしかしてこなかった。
それがコストカットです。
その過程で企業内の要員は減り人的資源は劣化を続けることとなった。言ってみれば今の状況は無定見な経営の帰結とも言えるでしょう。ただの自業自得でしかない。指をさして「バーカ」と嗤うべきものでしかない。

――コンビニは掲げる看板こそ全国ブランドですが、実際に店舗を経営しているのはフランチャイズチェーン(FC)契約を結ぶ零細事業者です。


沢田:そうですね。


――だからそれぞれの加盟店の採用コストは限られ、身を削るにも削りしろが小さい。人手不足や、激しい出店競争で加盟店が疲弊しているのは、このチェーン本部と加盟店というコンビニ独特の関係性が限界を迎えたからなのでは。


沢田:変えなきゃいけない。契約の形態とかそういう話ではなくて、考え方です。ファミマはおかげさまで約1万8000店という規模になりました。過去の経営陣が素晴らしかったからです。ただしここまで来ると地域ごとにそこそこ店がある。これまで本部の都合でばんばん出店してきたのですが、これからは加盟店の都合、地域の都合を考慮したうえで出店を考えなきゃいけない。


――具体的には。


沢田:たぶん他チェーンはやってないと思いますが、もっと店舗と店舗で情報交換してもらいたい。たとえば人手不足についても「うちの店ではタイミングがあわず採用できなかったけれど、こんな素敵な人が応募してくれたよ、そちらの店でどう?」みたいなやり取りが出来るようにしたい。


 出店戦略についても、地域にある7~8店舗の加盟店オーナーが集まって、セブンイレブンがどこにあってローソンがどこにあって、それに対してファミリーマートはどう攻めるのか。こっちはセーブして、代わりにあっちを攻めようとか、そういう話し合いをオープンに出来るようにしたい。

ファミマ社長「コンビニは間違いなく飽和状態」 (2ページ目):日経ビジネスオンライン

本部側から加盟店側の状況――とくに地域の情報を拾い出すという話は、実のところコンビニエンスストアにおける日常業務なんですよね。スーパーバイザーだとかエリアマネージャといった本部の御用聞き連中が地域の加盟店を回って拾ってくるべき話なんです。ところが、現実的なところでいえば彼らは本部のバイヤーを仕入れてきた商品の押し込み営業と加盟店オーナーの罵声を浴びるだけのことしかしていない。長いこと営業を続けている店舗によくいる下士官じみたパートタイマーからは表でも裏でもバカにされているような存在です。
ここにも人的資源の管理という面で問題があるんですよね。だいたい、スーパーバイザーとかなんかは入社して5年目くらいでなっているケースが多くて、殆どがペーペーなんですよ。それでいて、地域の状況だの情報は不足しているからまともに加盟店側と太刀打ち出来るわけがない。結局本部の立場としての御用聞きすらまともに果たせないわけです。
そもそもこういった業務はコンビニエンスストアの経営そのものを自家薬籠中のものとしているくらいでなければ務まらない仕事なわけです。それを机上の空論でペーペーにやらせるからこうなる。
本来であれば、もっと多く直営店を持った上である種の「隊付士官」として相当の期間教育させなければいけない筈なのに、それがやれていない。明らかに経営サイドの無能なわけです。ちなみにこの教育をやるにあたって「下士官」にあたるパートタイマー従業員は多数必要でしょう。そこの確保も出来ていません。上で述べた無定見な経営の帰結の典型例でしょう。

それで店舗側に出店戦略を諮るというのは決して悪い手ではないでしょう。少なくとも過度な共食いというのは避けられるし、商圏の重複や手薄な部分もある程度可視化出来る部分はあるんでしょう。ただ、当然加盟店側としてはそれらの情報はある意味生命線なわけですから、どこまで出してくるかは未知数ですが。

まあ、セブンイレブンの社長の極楽とんぼなインタビューと比較すれば、まだ現状に危機意識を持っているだけマシなのかな、と。そこだけは評価出来ます。
business.nikkeibp.co.jp
ゲップが出るほど現場の状況が見えていない、危機感の無い発言のオンパレードにもはや引用する気力すら失せます(失笑)。

*1:狭い地域に同一チェーンの店舗を多数出店させること。当該地域内での認知度向上もさることながら、配送オペレーションが容易になるという店で本部側のメリットが大きい反面、フランチャイジー(加盟店)側としては実態として同一チェーン内での「共喰い」状態になるため新規出店に対して反発する動きもある

*2:例えばフェア等に伴う増員や突発的な混雑に対応するなど

*3:その過程で定時制高校や大学の夜間部に通学させたりなどもしている