今日のガンダム(2016/12/18)
私自身は模型を細々作るほど手先が器用じゃないし、そもそもジオラマ以前に模型などという空間を極端に消費するものに関われるほどの余裕が無い*1こともあって実のところ説得力に欠ける話ではあるのですが。ただ、写真に関しては貧しい技量と乏しい機材を小さな頭脳をフル活用して多少なりとも見られるものにしようとしてきたことがあって、模型が存在する空間を写真という形で演出する方法論に関しては、まあ多少なりとも語れるのかな、と自負しています。
今回、「Diver City Tokyo」にある1/1ガンダム立像を撮影してきて、写真撮影のコンテクストからジオラマに活用出来るような話が書けないかと思いこの稿を起こしてみたいと考えました。以下、各種諸元を含めて色々と書いて行きたいと思います。
地球連邦宇宙軍 WB102号機(地球連邦軍 RX-78-2(マグネット・コーティング改修機))
Diver City Tokyoを背景に立つWB102号機
撮影諸元
F値 | シャッタースピード | 焦点距離 |
---|---|---|
F2.8 | 1/2000 | 6mm*2 |
ホワイトバランス
色温度 | 色かぶり補正 |
---|---|
5200 | +5 |
階調
露光量 | コントラスト | ハイライト | シャドウ | 白レベル | 黒レベル |
---|---|---|---|---|---|
-0.70 | +47 | -20 | +30 | 0 | 0 |
外観
明瞭度 | 自然な彩度 | 彩度 |
---|---|---|
+13 | +38 | +21 |
ハイライト | ライト | ダーク | シャドウ |
---|---|---|---|
-34 | -12 | +16 | +63 |
実用たる建物と等身大の模型を組み合わせた風景は、現実と虚構の境界であって写真の題材としては非常に面白いです。こと機動戦士ガンダムは二足歩行ロボットを用いた戦争を描いた作品の中でも現実的な部分と虚構的な部分が極度に綯交ぜとなっているがため、なおのこと見る側に現実か虚構か選択を迫ってきます。
本作例では開放絞りのうえで最速シャッタースピードの設定でも、欲しい露光量にはならず無暗に明るくなってしまうため、Lightroomで露光量を意図的に2段落とし、やや暗い情景としています。映像が極端に明るくなることで結果として虚構の怪しい部分がそのように見えず、ただただ現実を映し出すだけとなってしまうことを恐れたためです。このあたり、極力カリッとした仕上がりを求めたい航空機写真と異なるアプローチが必要だと感じます。
さて、今回撮影した1/1ガンダム立像ですが、当然ですが撮影者の視点は立像の足元ということになります。このようなやや見上げるような構図を取る場合、全体像を収めることを考えると広角で撮影する必要が出てきます。ただこれは以前ブログで取り上げたスネ吉のジオラマ論とは性質が異なっています。
ガンダムという虚構の存在を現実のものとして描くというアプローチをする場合、新聞紙面やグラフ誌*3に掲載されることを前提に撮影することが求められると思います。今回の立像の場合都市部の臨時に設営された補給拠点に、とりあえず野ざらしにしている……という妄想のもと、グラフ誌に用いるようなカットを撮ってみたという次第です。
新聞やグラフ誌に用いる場合、特にグラフ誌なんかが顕著ですが背景をカリカリ写し込む必要は無いわけです。欲しい被写体をガチッと抑えればむしろ背景は邪魔者と考えても良いわけです。レンズと素子の性格上どうしても絞ったような背景になりやすい傾向があることを考慮に入れて広角の開放絞りで背景を甘くした状態で被写体のガンダムを重視したカットに仕上げました。
正面からRX-78-2を見上げる。両腕のマグネット・コーティングとロービジで描かれた認識番号が目を惹く
撮影諸元
F値 | シャッタースピード | 焦点距離 |
---|---|---|
F2.8 | 1/2000 | 10.8mm*4 |
ホワイトバランス
色温度 | 色かぶり補正 |
---|---|
5350 | +3 |
階調
露光量 | コントラスト | ハイライト | シャドウ | 白レベル | 黒レベル |
---|---|---|---|---|---|
-0.30 | +100 | -30 | +74 | -4 | +17 |
外観
明瞭度 | 自然な彩度 | 彩度 |
---|---|---|
+60 | +55 | +4 |
ハイライト | ライト | ダーク | シャドウ |
---|---|---|---|
-58 | -3 | +56 | +80 |
等身大ならではのカットをどうしても抑えたいと考えたとき、必然的に正面から見上げるという凡庸なアングルにならざるを得ません。このカットもご多分に漏れず恐らく百人が居て百人が撮るような凡庸なものですが、せめてものの抵抗として50mmの標準画角を使い敢えてマニピュレーターを見切らせることで画面の外に広がる巨大さをイメージさせることにしました。
最近のガンダム関係の模型におけるデカールの一つの方向性として、ミリタリー色を強く出したものが多く、この等身大立像も肩につけた認識番号がロービジになっています。この日はちょうど順光だったのですが、それでもややもすると白が強くでて目立たないためコントラストを強くして敢えて目立たせるような補正を入れています。
この作例自体、恐らく模型でも再現は可能だと思います。むしろ背景部分をよりぼかし不明瞭にさせる方向性――すなわち被写界深度を浅く取った開放絞りで撮影することでチープなジオラマでも同じようなカットを作り出すことは可能ではないかと思う次第です。写真の方法論として、被写体をいかにして魅力的に撮影するか? というのがある種王道と考えるなかでいえばジオラマ作りという面で背景部分を極度に作り込み極端に絞ったものにしてしまうことの問題点にお気づき頂けるかと思います。
「ガンダム大地に立つ!!」を意識したカット
撮影諸元
F値 | シャッタースピード | 焦点距離 |
---|---|---|
F2.8 | 1/2000 | 10.8mm*5 |
ホワイトバランス
色温度 | 色かぶり補正 |
---|---|
6000 | +6 |
階調
露光量 | コントラスト | ハイライト | シャドウ | 白レベル | 黒レベル |
---|---|---|---|---|---|
0 | +43 | -28 | +19 | 0 | 0 |
外観
明瞭度 | 自然な彩度 | 彩度 |
---|---|---|
0 | +36 | 0 |
ハイライト | ライト | ダーク | シャドウ |
---|---|---|---|
0 | 0 | 0 | 0 |
このカットを撮ったタイミングはちょうど雲も少なく冬の抜けるような青空でした。
ガンダムのトリコロールカラーが溶け込まない程度にコントラスト等を補正した程度としました。露光に関してはドンピシャだったので補正無しです。こうした見上げる構図で広角を使うとどうしても実物よりも歪んでしまうため、フルサイズ換算で50mmの標準画角としました。
これも模型を使った再現が比較的し易いのではないかと思います。強いて言えばローアングルからどのようにして撮影するかというところが多少問題になってくるあたりでしょうか。