伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

神様のカルテ2(夏川草介/小学館文庫)


その昔、ナイター中継がお茶の間の団欒の中心にあった時代があった。当然というか巨人阪神戦(いや、別に巨人大洋戦でもいいが)を父親がビール片手に眺めている光景というのは、所謂「懐かしい光景」としての昭和像としてよく映し出されてきた。
いつのころからだろう。こんな風景が無くなったのは。少なくとも会社には「定時」というものがあって、残業が当たり前のような状態はそれほど無かった筈だ。
今はどうだろう。「定時」なにそれ美味しいの? 残業? 残業代なんか出ませんが、何か? そんなのが常態化している。かくいうぼくも、タイムカードと実際の残業時間がウン十時間差異があるなんてことが結構ある。それをここで云々するつもりは無いけども、いつから人は仕事というものがイコール生活となってしまったのだろうか?
本作に登場する医師たちの仕事ははっきりいって異常だ。連続三〇時間以上の勤務(当直勤含む)を当たり前のようにこなし、休日なんて殆どない生活を送っている。そんな中、当たり前のものとしてあるべき生活が崩壊した医師、重病に気づくことなく倒れ、そして死んでいく医師。明らかに常軌を逸している。
だけども、そこにはぼくらが医療というサービスに要求している異常な水準というものが存在していることを忘れてはならない。そして、この異常な水準というのは他のことにも言える。そこに人間が本来送るべき生活を放棄させるようなことが含まれていることも。
本作はあくまでもフィクションであり、人間の物語だ。だが、ここの描かれている異常さはぼくたちの日常にも敷衍すべきものが含まれている。前作に引き続き是非一読を。