伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

震災復興 欺瞞の構図(原田泰/新潮新書)


東京財団上席研究員を務めるエコノミストである著者による、震災復興がムダ使いだ、という主張の一冊。
復興に増税が必要ない、復興と称したムダ使いが行われている、といった総論の部分はぼくも賛同できる。が、あまりに極論過ぎるし実態や現場が見えていない、数字だけの空理空論でしかない。
例えば、水産業について各漁師に中古の漁船を買い与えればいい、水産加工場も各従業員に金を渡してあとは勝手にやらせればいい、といった意見がある。これが、暴論であることは関満博の東日本大震災と地域産業復興を読めばわかると思う。水産業/水産加工業自体非常に複合的なサプライチェーンを形成していて、どこが欠けてもうまくいかないのだ。エコノミストという割に、東日本大震災で発生したサプライチェーン問題を知らないんだろうか? これだけ読んでいる読者は騙せても、ぼくには噴飯ものだ。
確かに総論としての部分は価値がある議論だと思う。震災に乗じて従来やろうとしてきた(だけど予算がつかなかった)事業をどさくさでやって、復興が遅れるのは論外だ。だが、それを批判する意見がこんなお粗末なものでは、そりゃ取り入れられるわけないわな。外野の空理空論と切って捨てられるのがオチだ。
正直、読む価値はあんまりない。特に震災に関わったひとたちが読めば血圧があがるだけだと思う。そんなレベルだ。