昭和金融恐慌史(高橋亀吉・森垣淑/講談社学術文庫)
はしがき序第一部 昭和二年金融恐慌の基因第一章 金融恐慌の基因としての銀行制度の前近代性第一節 銀行制度の欠陥--前近代性第二節 銀行制度の前近代的特質形成の経緯第三節 機関銀行の発生・拡大第四節 その他の前近代的特異体質第五節 政府の銀行改善施策第二章 昭和二年金融恐慌の基因の累積第一節 大戦中のわが国経済規模の飛躍的拡大(一) 大戦によるわが国経済の異常発達(二) 経済規模の急膨張と銀行の態度にみられる問題点第二節 大正九年の財界大反動(一) 大正八~九年の思惑投機(二) 大正八~九年の熱狂的投機と銀行の加担(三) 大正九年反動の来襲第三節 大正九年反動の善後措置(一) 反動の性格の誤認(二) 善後措置の実情と性格(三) 安易な救済措置のもたらした弊害第三章 関東大震災以降の財界の打撃の累積第一節 関東大震災の打撃とその善後措置(一) 大震災による打撃とその救済措置(二) 震災善後措置の実情第二節 円為替の暴落、暴騰による新打撃(一) 震災後の円為替の暴落(二) 十四~十五年の円為替投機化と急騰(三) 円為替の急騰と財界の再悪化第四章 休戦九年反動以降の企業、銀行の打撃の累加第一節 休戦以降の財界打撃の累加第二節 企業欠損の累増と銀行の不良貸出の累積第三節 破綻銀行に露呈された企業-銀行の高度な癒着関係(二) 十五銀行と松方系会社との癒着関係(三) その他の若干の事例第二部 昭和二年金融恐慌の誘因と推移第一章 昭和金融恐慌の誘発第一節 昭和金融直前の情勢(一) 金融恐慌直前の経済的行詰り(二) 円為替相場の激動と財界疲弊の激化第二節 金解禁断行決意の準備工作とその影響(一) 片岡蔵相の金解禁準備工作(二) 金解禁論の問題点第三節 震災手形処理問題(一) 震災手形処理状況(二) 震災手形処理法の概要(三) 震災手形処理法案の審議過程における実情の暴露第二章 昭和金融恐慌の勃発と経過第一節 金融恐慌勃発とその通観第二節 金融恐慌の第一波第三節 金融恐慌の第二波(一) 台湾銀行の鈴木絶縁(二) 枢密院の緊急勅令否決第四節 金融恐慌の第三波(一) 台銀、近江、十五銀行の休業(二) 全国的な銀行取付の発生第三章 昭和金融恐慌の善後処置第一節 政府の救済措置(一) 事前の予防措置と第一次の緊急措置(二) 本格的恐慌収拾対策の発動(三) 日銀特融および損失補償法(四) 両特融救済法の実施とその結果(五) 政府措置に対応する日銀・市中銀行の対策第二節 休業銀行の整理(一) 休業銀行に対する措置(二) 整理上の問題点(三) 昭和銀行の設立による吸収整理(四) 台湾銀行の整理(五) 十五銀行の整理第三部 昭和金融恐慌のわが国経済に及ぼした影響とその歴史的意義第一章 金融構造および金融市場に及ぼした影響第一節 金融の変態的一大緩慢化(一) 恐慌鎮静後の金融の推移(二) 異常の低金利時代の出現とその理由第二節 預金の流れの変化と大銀行集中の急進展(二) 大銀行の地位の飛躍的向上(三) 資金の大都市集中第三節 恐慌後の金融変容のもたらした問題点(一) 日銀の金融統制力の減退(二) 金融緩慢化の中小企業の金融難(三) 金融界からの金解禁即時断行論の擡頭第四節 昭和金融恐慌の経済界に与えた打撃とその特質(一) 産業界に与えた打撃(二) 証券、商品両市場に与えた打撃(三) 昭和金融恐慌の特質第二章 昭和金融恐慌の真因とその歴史的意義第一節 金融恐慌は不可避であったか(一) 直接因とその対策批判(二) 金融恐慌の真因とその不可避性第二節 昭和二年金融恐慌の歴史的意義(一) 銀行制度改善の促進(二) 大財閥支配体制の確立付属資料(1) 昭和金融恐慌関係主要日誌(2) 昭和金融恐慌関係重要法令解説 昭和金融恐慌と平成不況の類似点 鈴木正俊
歴代首相の経済政策全データ増補版(草野厚/角川oneテーマ21)
慶應義塾大学総合政策学部で政治学、日本外交論、政策過程論を専門とする著者による、戦後の首相の経済政策を中心とした政策概要を纏めた一冊。新書本らしい企画ながら、各内閣における所信表明演説はじめ、施政方針演説、財政演説、経済演説からもひいて紹介しているあたり、かなりの労作である。
昔、といってもせいぜい20~30年前のネット界隈(パソ通全盛期からインターネット黎明期)と異なり、今のウェブ界隈では昔であれば常識であったことが全く知られてないということが当たり前で思わず仰け反ることが、ままある。例えば、保守本流と言って清和会が出てくるとか、ぼくみたいなおじさんからすると頭が痛い限りだ(本書にはそこまで詳しく出ていないが、保守本流と言えば平成研究会や小沢一派が系譜的には該当する。清和会は保守傍流が正解)。それこそwikipediaで自民党の歴史でも追っかけてくれていれば多少はまともな会話ができるのだけれども、それもしないでわめく連中とは、とてもじゃないけどやっていられないというのが正直な感想だ。こんなことを言うとお叱りを受けそうだけども、派閥とは何か? だとかそんなところから教えて差し上げなきゃならないなんて、オレは池上彰じゃねぇってぇの!
本書はそんな戦後日本の政治的系譜をかなりしっかりと押さえている点で十分有益だと思う。これを通読した上で、よくわからない点をwikipediaあたりで補足すれば、少なくとも床屋政談をする上で十分すぎるものだと思う。特に、経済政策の効果という点については前後の内閣との関係も詳述してあるので、ここらへんについて語りたい向きは読んでみるといいだろう。
ぼく自身も、一発屋経済官庁であるところの経産省(通産省)がいつからそうなったのか? という点で佐藤内閣という一つの頂点が転換点になっているということを把握したし、記憶がおぼろげだった歴代内閣の政策について総ざらえできたという意味では中々読み応えがあった。
政治がどうこうと語りたいならまず一読、そして座右に。興味の無い向きも新聞の政治欄を楽しく読むことができる一冊だと思う。