伊達要一@とうきょうDD954の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

現場主義の知的生産法(関満博/ちくま新書)


ぼく自身の話になるけど、コンサルタントというものが大嫌いなのだ。この大嫌いにはツンデレ的成分が多分に含まれているような気もするのだが、どうにも性に合わない。というのも、コンサルタントと称する連中の成果物が基本的に糞だからだ。「お前の身の回りのコンサルが糞なだけだろう」と言われればそれまでの話なのだけども、とはいえ、まともなコンサルの成果物ってなんなんだろうか? 調査報告書? サーベイ? そんなものどうだっていいのだ。コンサルを依頼する側は、まず(コンサル屋が大好きなアンケートやら仮説の前に)自分たちの話を聞いて欲しいのだ。ところが世間のコンサル屋はまずアンケートだという。自分たちの仮説に基づく検証だという。ふざけんじゃねぇ、ばかやろう! ってのが本書の主題だ。といっても、ぼくみたいに柄が悪い書き方じゃないからご安心を。最初に述べたように、中小企業の研究で知られた著者の「現場」体験のエッセンスが詰まった一冊だ。
さんざコンサルをくさしてきて何だけども、ぼく自身コンサルの手先みたいなことをやっていて、コンサルを称する連中にいつも「逝ってよし」とか思っている。思っているけど共犯者の類ではあるという忸怩たる思いがいつもある。そんななか、本書を読むとまるで座禅中に竹箆でバシンとやられたような気持ちになる。糞な成果物を売りつけている身からすれと生きててゴメンナサイという気分になってしまう。だけどそんな重たいものを受け止めて仕事ってのはしてかなきゃならないんだ、ということを身に沁みこませるという意味で(またそれだけでも)読む価値はある。筆者の「『現場』は刈り取るものではなく、共有しともに育っていくものなのである」という言葉をかみしめつつ、自省していきたい今日この頃だ。
学生さんはとにかく必読(所詮新書なんだから、買ってでも読むべし)。社会人で他人の相談事に乗るような仕事の人は必読以前の問題だ。基本的にはアカデミックの人の本だけども、本書のパースペクティブは必ず役立つ。