伊達要一@とうきょうDD954の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

書評

時刻表昭和史(宮脇俊三/角川文庫)

存外、個人の人生というものは鉄道の動きに合わせたものなのかもしれない。最近ふとそんなことを思うようになってきた。 なんとなれば、ぼく自身も小学校に上がるまでは「電車」に乗ることが特別な出来事であった。それは実家のマイカーで移動することが多か…

日本人のためのアフリカ入門(白戸圭一/ちくま新書)

アフリカといえばどのようなものを連想するだろうか。紛争? 飢餓? 貧困? 部族対立? 汚職や不正? たしかにこれらはアフリカという地域の一つの側面である。一時期コピペネタとして「ヨハネスブルグのガイドライン」なるものが流行った時期がある。今では…

シビリアンの戦争(三浦瑠麗/岩波書店)

いきなりで恐縮だが、ぼくはドイツ参謀本部のような歪んだプロフェッショナリズムというものが大嫌いだ。ドイツがあんなグチャグチャになったのも、極論を言えば彼らの歪んだプロフェッショナリズムがドイツという国家を自爆に導いたと思っている。同様に日…

空港の大問題がよくわかる(上村敏之・平井小百合/光文社新書)

同人サークルであるイオシスの追っかけをやりながら、フライトシミュなんぞやっていると自然と航空業界に親しむことになる。なんとなれば、イオシスは北海道は札幌を拠点にした(いや、東京組はいるけども)同人サークルであるし、フライトシミュは読んで字…

面白南極料理人 お料理なんでも相談室(西村淳/新潮文庫)

38次南極ドーム基地越冬隊の調理担当である筆者が、100の料理に関する質問に答えるというもの。 南極越冬隊の話以上に食い物の話ばかりで、とにかくお腹が空くことうけあいである。さらに、相談の回答の過程でレシピも充実。 読書向きの本では無いけども、料…

身近なもので生き延びろ(西村淳/新潮文庫)

面白南極料理人こと海上保安官にして30次及び38次南極観測隊の料理人として参加した著者のサバイバル読本。サバイバルといっても、マニアックなツールを……というよりも身近なシロモノを活用するという話なのだ。 どちらかといえば、ミリタリクラスタの自分か…

不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス(宮嶋茂樹・勝谷誠彦 構成/新潮文庫)

説明不要な「不肖・宮嶋」氏とサイバラさん曰く「ほもかっちゃん」勝谷氏による爆笑ルポルタージュ。以前ツイートした「面白南極料理人」(西村淳/新潮文庫)と時期がオーバーラップしているので併せて読むと吉。 ただ、色々と朝日だの社民党だのこき下ろし…

面白南極料理人(西村淳/新潮文庫)

「読むと腹が減る」本というものが世の中にはある。料理好きであれば料理のレシピ本なんてのが典型的なものだろうし、紀行文なんかもその典型だ。というか読者を置き去りにして松葉ガニをむさぼり食うだとかもはや拷問の域に達していると思う。 この南極面白…

ルポ貧困大国アメリカII(堤未果/岩波新書)

前作でジャーナリストとして一躍有名になった著者の続編。アメリカにおける教育や社会保障、医療制度、治安問題について述べた一冊だ。 前作でも述べたが本作の論調は比較的左派的な見解が中心になるし、アメリカにおいてもメジャーな意見としては扱われてい…

自分で調べる技術(宮内泰介/岩波アクティブ新書)

インターネットの普及に伴って、「知っている」から「調べる」への置き換えが進んで久しい。かくいうぼくも、結構いろんなことを忘れながら生きていて、本を読んだり調べ物をしたりするとき、ウェブだの辞書だの、それに参考資料を探したりしながらやってい…

蕎麦屋の系図(岩﨑信也/光文社新書)

蕎麦というと、色々とイメージが発展しており中々話しが噛み合わないことが、ままある。日常的に掻っ喰らう蕎麦、忙しい時に手軽に食べる蕎麦、それに酒を飲みながら粋に食べる蕎麦、だ。ぼくなんかは二ツ目の立ち食い蕎麦をこよなく愛しており、粋に食べる…

空洞化を超えて(関満博/日本経済新聞社)

中小企業研究で著名な、明星大教授である著者による、いわゆる「空洞化」問題について解説と提言を行った一冊。 著者は中小企業の現場に密着した調査に定評があり、本書でもそういった視座に基づく議論を展開している。一般に空洞化というと雇用という観点か…

決戦下のユートピア(荒俣宏/文春文庫)

博学で知られる著者による第二次大戦下の日本におけるひとびとの暮らしを面白おかしく綴った一冊。 ぼく自身ミリヲタとして非常にアウトサイダーなヤツでありまして、兵器の話だとか戦術の話よりも、末端の飯炊き兵のはなしだとか輜重輸卒のはなしが大好きな…

地域を豊かにする働き方(関満博/ちくまプリマー新書)

中小企業研究で著名な明星大教授である著者による、東日本大震災被災地の中小企業から見る地域産業と日本の産業の将来について論じた一冊。 先日紹介した「東日本大震災と地域産業復興」を、一般向け(若干若い世代向けかな)に纏めなおしたような感じで、前…

クルーグマン教授の経済入門(ポール=クルーグマン著、山形浩生訳/ちくま学芸文庫)

ノーベル経済学賞を受賞した経済学者による、経済学入門書。いわゆる教科書的な本とは一線を画し、新書本的な体裁で纏まっているものの、経済学の基本的な部分をしっかりと押さえた素晴らしいものだ(もっとも、原著はやたらと重々しいハードカバーなんだけ…

格差社会 何が問題なのか(橘木俊詔/岩波新書)

京大で教鞭をとる著者による、日本の「格差」問題についてデータをもとに分析した一冊。 いわゆる「格差」問題というのは、どうしてもイデオロギー的な側面とやっかみを中心とした嫉妬がからみ冷静な分析というのがとても少ないのだが、本書はこれに対して極…

ウチのシステムはなぜ使えない(岡嶋裕史/光文社新書)

富士総合研究所を経て、関東学院大学で教鞭を執る著者による、ユーザ向けのIT解説本。 全般的に著者が経験したのであろう「あるある」ネタが豊富で、IT屋に関わるひとたちからすると、笑い(それが失笑なのか、それとも冷笑なのかは敢えて語らない)がも…

震災復興 欺瞞の構図(原田泰/新潮新書)

東京財団上席研究員を務めるエコノミストである著者による、震災復興がムダ使いだ、という主張の一冊。 復興に増税が必要ない、復興と称したムダ使いが行われている、といった総論の部分はぼくも賛同できる。が、あまりに極論過ぎるし実態や現場が見えていな…

続・オーケストラは素敵だ オーボエ吹きの修行帖(茂木大輔/音楽之友社)

N響首席オーボエ奏者によるエッセイ。以前紹介した前作の続編だ。あとがきに「山下洋輔」の名前が出ているように、所謂「昭和軽薄体」の雰囲気に満ちていて、とっても楽しいエッセイ。 各楽器についての解説的な内容が多かった前作よりも「楽隊」の裏話的な…

ユダヤ人とパレスチナ人(松本仁一/朝日新聞社)

朝日新聞で海外特派員を経験し、現在はフリージャーナリストとなっている著者による、中東における対立を纏めた一冊。 「カラシニコフ」や「アフリカを食べる/アフリカで寝る」と同様に、現地に住むひとびとへの徹底した取材に基づくものとなっており、非常…

オーケストラは素敵だ オーボエ吹きの楽隊帖(茂木大輔/音楽之友社)

N響首席オーボエ奏者の著者によるオーケストラをテーマにしたエッセイ。クラシックをあまり知らなくても楽しめるし、知っていればなおのこと楽しめる、肩の力を抜いた気楽に読める一冊だ。 読んでいて一番「あー」と思ったのが、弦楽器と管楽器の価格格差の…

地域経済と中小企業(関満博/ちくま新書)

中小企業研究で著名な明星大教授の著者による、東京近郊の中小企業集積について分析・研究した成果を纏めた一冊。 京浜工業地帯ということばを今でも小学校では教えているのだろうか? 今日ではこういった形態での工業集積分類はあまり意味が無いとされてい…

東日本大震災と地域産業復興II(関満博/新評論)

いやはや、メモも取らず一気に読んでしまった。これはスゴイ本だ。先に紹介した同タイトル書の続編。2011年10月1日から2012年8月31日までの中小企業の復興について記述されている。内容的には平易だけどもやはり専門書、大部ではある。でも一度は手に取って…

東日本大震災と地域産業復興I(関満博/新評論)

東日本大震災後2011年10月1日までの地域産業について「現場」での動きを詳述した本。ぶっちゃけた話、かなりの専門書であることは間違い無くて、あまり一般向けではないのだがそれでもここで紹介して色んな人に読んでもらいたい本だ。特に学生さん、それも文…

フルセット型産業構造を超えて(関満博/中公新書)

中小企業研究で知られる明星大教授の著者による、日本の産業構造の転換とそれに伴う東アジア諸国との工業技術ネットワークの形成について論じた一冊。 書かれたのが1993年とこの手の本としてはだいぶ昔に感じるところではあるが、述べられている内容は今でも…

アメリカ下層教育現場(林壮一/光文社新書)

ボクシングのプロテストに合格したのち、週刊誌の記者を経てノンフィクションライターになった著者による、アメリカの底辺校での教育とカウンセリングを行った経験を綴った一冊。制度問題や提言というよりも、ありのままの体験談として捉えた方が良いと思う…

すべての経済はバブルに通じる(小幡績/光文社新書)

個人投資家としても有名な慶應大学准教授である著者による、近年発生している「バブル」についてそのメカニズムを分析した一冊。実務者寄りというよりかはかなり理論的な本で、ちょっと内容は難しめだ。それでも新書として出ている本だし、それほど人を選ぶ…

ルポ貧困大国アメリカ(堤未果/岩波新書)

ジャーナリストとして活躍する著者による――というか本作が出世作だな――アメリカの貧困層を現場からとらえた一冊。 こと、ウェブ界隈では左巻きな論調をバカにしてかかる風潮があるし、恐らく本書で書かれているような内容はその範疇に入ってしまうだろう。実…

ニコンF3最強伝説(マニュアルカメラ編集部/枻文庫)

ニコンF3に焦点をあてたムック本的な一冊。この手の本は割高に見えて意外に知らなかった事実がサラッと書いてあったりしてなかなか侮れない。 例えば、ニコン=プレス向けという印象があるけども、モータードライブを使った高速連写に関していえばキヤノン…

デフレの正体(藻谷浩介/角川oneテーマ21)

日本政策投資銀行に勤務し地域振興の各分野に活躍する傍ら、平成合併前の約3200市町村の99.9%、海外59ヶ国を訪問した経験をもつ著者による、景気不振についてかなり大胆に論じた一冊。背表紙の惹句に「『景気さえ良くなれば大丈夫』という妄想が日本をダメに…