伊達要一@とうきょうDD954の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

今日のはてブ(2017/05/30)

今月ですけども、日中殆ど出かけていることもあってはてブを全く公開していないことに今更になって気づいた次第です。半ばノルマ消化的でアレですが興味深いネタがあったので取り上げてみたいと思います。

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ハイローミックスの落とし穴――サイボウズのPC管理に見る「ハイスペック機種統一」のススメ

OAについて考えると、PCに関しては多くの企業において「コストダウンしなければならないもの」というドグマに囚われがちな中で、非常に面白い取り組みです。

多くの企業において、標準的PCを従業員に貸与する際には上述のドグマによって極力安い端末を選ぶ傾向にあります。自然、格安のデスクトップPCやA4サイズノートPCが中心となって、例外的に持ち運びが必要だったりする従業員にはB5サイズだったりウルトラブックを仕方なく調達して貸与することになります。
結果として、保有する機種は最低でも3種類から4種類といったところになるでしょう。
さらにそれ以外にもハイスペックなPCが必要なひと*1には、個別に購入したものを情報システム部門がサポートするだとか、とかく手間がかかる対応をしているところが散見されます。
また、本当に業務上ハイスペックなワークステーションなどを必要とする部門*2は、自分たちで管理調達することを条件に個別にバラバラに購入することになるわけです。しかも、自分たちで管理調達するという前提は殆ど守られることなく情報システム部門はこれらのサポートもしなければなりません。

これらは「ハイローミックス*3」と言えば聞こえが良いですが、実際は可視化されないコスト――総務部門や情報システム部門のPC在庫管理やサポートにかかるコスト――が多大にかかっており、格安なPCを調達したメリットを大きく毀損することとなってしまっています。困ったことにこれらのコストは総務部門や情報システム部門という「コストセンター」が被っていることから、単に「総務や情報システムは金食い虫」程度にしか認識されないことになります。また、これらのコストを各利用者に配賦するにあたって、適切な配賦方法を算定するのが難しく、往々にして大きく受益しているところがトクをするということになりがちです。例えば、PC台数で割り返して配賦するとすれば、余計な手間のかかる特殊なPCを使っているところは、標準的なPCしか使っていないところにコストを押し付けることになるからです。それでは具体的なPCごとに配賦の率を変えるということも考えられるのですが、現実的に個々にそれらを算定することは難しく、このあたりはなぁなぁになりがちなところです。

このあたりのところを前提知識としてはてブで取り上げた記事を見てみましょう。

サイボウズのPC標準機はどれもメモリ32GB積んでるって、正直ムダじゃないですか? | サイボウズ式

企業におけるOAコスト削減の模範的な動き。唯一気になるのは標準PCの在庫管理や更新に伴うスペックの不統一なんかをどうしているというあたりかな。

2017/05/24 20:31


まず、サイボウズであってもかつては上述したような「ハイローミックス」のドグマに囚われていたというのが大変面白い話です。上述したようなことが、如何に多くの企業に蔓延っているかということを傍証するようなことになります。
そんななか、ハイスペックなマシンに統一するという興味深い動きを同社ではしたわけですが、そのなかでこの発言が大変注目すべき点です。

山本泰宇氏
でも昔と違い、今はPCコストを取り巻く状況と感覚が変わってきています。たとえばエンジニアに10万円のPC、事務などバックオフィスには6万円の安いPCを支給するとします。そうすると逆に情シス側の管理の手間がかかってしまいます。保守交換用に2種類のPCを用意しておかなければいけませんからね。

サイボウズのPC標準機はどれもメモリ32GB積んでるって、正直ムダじゃないですか? | サイボウズ式

極めて驚嘆すべき慧眼と言えるでしょう。現実的にPCはよく壊れるものであってその際にはPCを保守交換しなければならないわけですが、そのためにはある程度の在庫を持つ必要があります。上述したように多くの機種を標準的PCとして採用している場合、それらを在庫しなければならず、さらに言えば交換にあたりそれぞれ異なる作業手順が必要になってきます*4連結で516名*5と上場企業としては比較的小規模なサイボウズであったとしても、当然可視化されないコストは多大なものになりかねないわけです。それどころか、規模が小さいことから調達にあたってボリュームを確保できないことから、より高コストでの調達になりかねないことになります。SSDを増強したという話も高いレベルに仕様を統一することで、利用者の便益と情報システム部門のサポートの手間を減らすという点で極めて素晴らしい動きであると思います。
結果としてサイボウズは高いスペックに合わて機種を揃えることで、トータルのコストを下げるということを実現したわけです。

一方でキーボードやマウスといった人間に近いところにあるインタフェースに関しては、個々の利用者側で好きに選択させるというのも面白いところです。このあたりまで統一することで得られるコストメリットと利用者のデメリットを天秤にかけて敢えて統一しないという考えにしたのは、利用者の立場としては大変に有り難い取り組みと言えます。コストセンターとしての情報システム部門としても、このあたりに立ち入ることでより面倒が増えることを勘案してのことではあるでしょうけども*6

かようにサイボウズの取り組みを激賞したわけですが、この記事にも*7いくつか不満があります。

当然、常に同じ機種で揃えるということは現実的には難しいわけです。BTOのメーカーからある程度まとまった台数を調達するといっても、人員はある程度動くしそれに合わせてPCの総台数も増減していきます。従って更新のタイミングもバラバラになるわけです。記事のなかでも「2~3年での更新」*8に全てを入れ替えるというのは不可能になります。このあたりをどのようにマネジメントしているか、ある意味サイボウズ情報システム部門における「秘伝のたれ」にあたるような話なので触れられていないんでしょうけども、若干食い足りない感があるのは事実です。
また、デスクトップPCとノートPCを併用しているというあたりに関してもそうですが、在庫管理をどのようにしてコストを下げているのか? というところも知りたいところです。恐らくは標準的なPCの中に組み込んでいて、それを2台提供しているんでしょうけども、このあたりもどのように機器管理をしているか、興味深いところです。

とはいえ、多くの情報システム部門にとって一度読んでみて自らを省みるべき記事であると言えるでしょう。

*1:これがロクにPCを使うことのない経営陣だったりするあたり泣けてきますが

*2:設計だとか研究開発なんかが多い。情報システム部門は発言力の弱さから標準的なPCの利用を強いられることが殆どだったりするのがこれまた泣けます

*3:高いスペックの装備と低いスペックの装備を必要に応じて組み合わせることでコストを抑えるという考え方

*4:PCの構成が異なれば企業の標準的環境に接続するための設定も各々異なることになるため

*5:2016年12月末

*6:キーボードやマウスに起因するトラブルはPCそのもののトラブルに比べて発生しにくい

*7:サイボウズのPRブログという点を割り引いたとしても

*8:実はこれもかなり短いスパンでの更新で利用者としても非常に有り難い話ではある