伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

妖怪Walker(角川書店/村上健司)


東方Project」というシューティングゲームをご存じだろうか? ZUNこと太田順也氏率いる「上海アリス幻樂団」という同人サークルが手掛けたインディーズゲームだ。これがシューティングゲーム界隈はおろか音楽・文芸その他色んなジャンルにわたって二次創作が作られ大変な盛り上がりを見せている。ぼく自身一連のゲームを一通り遊んでいて、ゲームそのものの楽しさ(いわゆる「弾幕シューティング」というゲームの中では比較的とっつきやすいし、何回もプレーして楽しめる)もそうだけど、その世界観やキャラクターたちの魅力にあふれているということがその理由なのかな、と思う。
この作品に登場するキャラクターのモティーフというのが、様々な伝承に記された妖怪たちだ。例えば、東方紅魔郷という作品であれば「レミリア・スカーレット」という吸血鬼だったり、東方永夜抄であれば「蓬莱山輝夜」という名前でかぐや姫が取り上げられている。直近の作品である「東方神霊廟」では、なんと聖徳太子をモティーフにしたキャラクターまで登場しているのだ。聖徳太子は近年架空の人物という説が濃厚になったことで取り上げたとのことだが、いやはやこういったジャンルの意欲というかそういったものは、とことんまで面白いと思う。
さて、そんな妖怪たちは各地に存在する伝承がもとになっているわけだが、そんな地方の伝承をコンパクトにまとめたのが本書だ。「××Walker」というタイトルでわかる通り、体裁としては観光ガイドの形をとっている。若干安直にも感じるが、そういった原典にあたろうとするニューカマーにとっては大変にわかりやすいし便も良いものだろう。
先ほど述べた「東方Project」で取り上げられた妖怪たちの伝承も沢山掲載されている。例えば、河童の「河城にとり」であれば河童の巻という形で一章まるごと取り上げられているし、鬼の「伊吹萃香」「星熊勇儀」について言えば、その原点となる「大江山酒呑童子」の伝承について一項目まるごと使って取り上げている。
比較的コンパクトで読み易い本だし「東方Project」からその原点である伝承に興味を抱いた読者にはうってつけだと思う。だいぶ古い本だが幸いなことにこの手の伝承についてはさほど古びるということは無いので、もし見かけたら是非手に取って欲しい。
ここまでは真面目なお話であとは多少ヨタ話でも。
本書を読んでいて、今まで「東方Project」に取り上げられていないジャンルに「石」があると思ったわけだ。新作がいつごろ出るのかどうかはわからないものの、次回作のキャラクターに化け物石をモティーフにしたキャラクターが登場するんじゃないかと、ぼくはにらんでいる。しかし石となるとどうやってキャラクター付けするのか、正直まったくイメージが湧かない。それもあって今まで取り上げられてないのだろうけども、そろそろネタも尽きそうなところではあるし、いい加減取り上げられてもおかしくないのかな、などと。

はじめに

鬼の巻
狸の巻
鵺の巻
河童の巻
石の巻
怪獣の巻
天狗の巻
猫の巻
狐の巻
猿神退治の巻
温泉の巻
妖怪探訪おすすめ十コース

あとがき
索引