伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

面白南極料理人(西村淳/新潮文庫)


「読むと腹が減る」本というものが世の中にはある。料理好きであれば料理のレシピ本なんてのが典型的なものだろうし、紀行文なんかもその典型だ。というか読者を置き去りにして松葉ガニをむさぼり食うだとかもはや拷問の域に達していると思う。
この南極面白料理人も、食欲があまりない筈なのに何故か「読むと腹が減る」不思議な本の一つだ。南極の極寒の地で繰り広げられるご馳走に、もう生唾もんでございますことよ。おまけに筆者は海上保安庁所属の主計担当でレストランのシェフとかではない為、日常的な料理が日常的ではない素晴らしい食材を用いて豪快に調理される様に食欲を刺激することしきり、というわけだ。
南極の観測というと観測船の〈しらせ〉がボロくなって色々問題になってたり、搭載ヘリをどうするんだという問題があったりと、軍事クラスタ的にはネガティブな話題が多かったりするんだが、本書で描かれている南極観測の「日常」はそんなネガティブな空気を吹き飛ばすようなお気楽さと真面目さが入り混じっている。そういう意味でただの「読むと腹が減る」本とは一線を画していると云える。
あとそういえば、不肖・宮嶋氏が地味にdisられていたり。宮嶋氏も週刊文春に掲載されたルポをまとめた南極体験記を出しているが、あれに書かれている内容について現地からは色々と突っ込まれていたりする。宮嶋氏の方を読んでいる方は是非ともこちらも一読して欲しい。色々と笑いが込み上げ、腹が減ることうけあいだ。