伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

空洞化を超えて(関満博/日本経済新聞社)


中小企業研究で著名な、明星大教授である著者による、いわゆる「空洞化」問題について解説と提言を行った一冊。
著者は中小企業の現場に密着した調査に定評があり、本書でもそういった視座に基づく議論を展開している。一般に空洞化というと雇用という観点からの議論が中心になるが、それと同時に発生している「技術」や「地域」の「空洞化」という極めて示唆的な着目点で論を展開しているのは、かなりアイ・オープナーなものだと思う。
本書が刊行されたのが1997年と少し前なこともあり、ここで述べられているのは一昔前の内容かもしれない。今日では日本企業が中国やASEAN諸国での生産を行うのが至極当たり前のことになってしまっている。しかし、その背景として日本国内の産業構造がどのようになっているのか? ということを知っておくのはとても有用なことだと思う。そういう意味では是非一度手にとってみて欲しい。

プロローグ 空洞化の連立方程式
第1章 産業空洞化をどうみるか
 1 マクロ的な空洞化論の限界
  (1) プロダクト・サイクル論は妥当か
  (2) 付加価値の高い産業とは
 2 もう一つの「産業空洞化論」
  (1) 技術の「空洞化」
  (2) 地域の「空洞化」

第2章 マニュファクチュアリング・ミニマム
 1 技術の集積構造とその空洞化
  (1) 技術集積の三角形モデル
  (2) 産業構造転換を支える基盤技術
 2 マニュファクチュアリング・ミニマムとは何か
  (1) 技術の組み合わせとしての「ミニマム」
  (2) 「ミニマム」の維持と展開

第3章 産業構造分析の新たな視角
 1 技術基盤をベースにする産業分析
  (1) 従来の産業分析の顕界
  (2) 加工機能に着目した機械工業分析
 2 加工機能による企業類型
  (1) 製品開発型企業の叢生
  (2) 重装備型企業類型の現在
  (3) 機械加工型企業類型の展開
  (4) 周辺的機能の拡がり
 3 加工機能とマニュファクチュアリング・ミニマム
  (1) 加工機能の欠落とモノづくり
  (2) 地域とマニュファクチュアリング・ミニマム

第4章 「地域空洞化」と「技術空洞化」は防げるか
 1 地域産業の技術集積の諸問題
  (1) 大規模企業城下町の困難
  (2) 地域産業の困難
  (3) 誘致企業の動向に揺れる地方小都市
 2 マニュファクチュアリング・ミニマムの模索
  (1) 室蘭と京浜地区のリンケージ・プラン
  (2) 地域技術の高度化
  (3) 地域工業の構造調整後の図式
  (4) 「ミニマム」を確保、形成していくための課題

第5章 新たな東アジア分業と技術移転
 1 地域中核企業の海外進出
  (1) 進出大企業と地域中小企業の関係変化
  (2) 海外進出と地域経済への影響
 2 アジア進出の新局面
  (1) 「輸出組立基地」としてのアジア
  (2) 「中国の事情」の変化
  (3) 「市場」としての中国
 3 産業システムの移管
  (1) 電子部品メーカーの中国進出
  (2) 産業システムの移管が意味するもの

第6章 東アジア各国地域の自立化と日本産業
 1 対中自動車交渉に学ぶもの
  (1) 中国の自動車政策
  (2) 国産化への協力
 2 アジア各国の技術構造とネットワーク
  (1) 中国の「技術」に対する評価
  (2) アジア各国地域の技術構造
  (3) ネットワークとマニュファクチュアリング・ミニマム

エピローグ 「モノづくり」と「人づくり」