伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

クルーグマン教授の経済入門(ポール=クルーグマン著、山形浩生訳/ちくま学芸文庫)


ノーベル経済学賞を受賞した経済学者による、経済学入門書。いわゆる教科書的な本とは一線を画し、新書本的な体裁で纏まっているものの、経済学の基本的な部分をしっかりと押さえた素晴らしいものだ(もっとも、原著はやたらと重々しいハードカバーなんだけどね)。
山形浩生さんの翻訳が非常に平易で読みやすく経済学入門者には是非おすすめしたい一冊……と言いたいところなのだが、ちくま学芸文庫版には最大にして最悪の欠陥がある。脚注が巻末に纏められてしまっているのだ。もともと本書はメディアワークスから単行本が出て(1998年)その後日経ビジネス人文庫に文庫落ち(2003年)したのだが、これらは脚注がページの中で完結していて大変読みやすかったのだ。ところが、ちくま学芸文庫に収録(2009年、今回紹介するのもこのエディションだ)された際に、何があったのかはわからないのだが脚注がすべて巻末に纏められてしまうことになったようだ。これは、初学者が読むにはちょっとどころじゃなくて不便だし、あまり好ましいことではない。正直これは筑摩書房の編集者の怠慢としか言いようが無い。
ただ、内容については先述の通り申し分ない素晴らしいものだ。新聞などで経済についてよく触れられるトピックについて、真っ当な経済学の観点から説明した本文(そして繰り返しになるけどもとってもくだけてるが読みやすく平易な翻訳)は経済学を勉強している人のみならず、社会人でも是非一度読んでほしいところだ。おそらく、新聞の経済記事がより一層わかりやすくなるだろう。
また、巻末の「日本がはまった罠」については、リフレ政策を現政権が提示している中で、その原理について知るには良い内容だろう。こちらについては、若干数式が出てくる分ちょっと難しいが、本書を読み通した読者であればなんとかなるレベルの内容だ。リフレ政策に賛成の立場に立つにせよ、反対の立場に立つにせよ、その理論の部分を知っておくのは損なことじゃない。ただし、著者は(というか訳者も)インフレターゲティング論賛成の立場として有名な人物であるので、そこを割り引いて読むべきではある。
今経済学を学んでいる学生さんをはじめ、経済というものが今一つよくわからないという社会人も是非一度手に取ってみて欲しい。もやもやした経済というものについて、骨太な知識が得られるはずだ。