伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

ウチのシステムはなぜ使えない(岡嶋裕史/光文社新書)


富士総合研究所を経て、関東学院大学で教鞭を執る著者による、ユーザ向けのIT解説本。
全般的に著者が経験したのであろう「あるある」ネタが豊富で、IT屋に関わるひとたちからすると、笑い(それが失笑なのか、それとも冷笑なのかは敢えて語らない)がもれること間違いなしの本ではある。ただ「ウチのシステムはなぜ使えない」と思っている当事者にとって役に立つかは別問題だ。
著者はある種「ハウツー」的に書いているつもりかもしれないが、残念ながらIT屋の首根っこを捕まえるにはちょっと能力不足と言わざるを得ない。システムを使うユーザからすれば、腹立たしいことこの上ないが、IT屋ってのは本当にロクデナシのクズしかいない。IT屋に日頃接しているぼくが言うのだから間違いない。ぼく自身、人生何でも屋で暮らしてきたこともあって、各方面にちょいちょい役立たない知識の固まりだけあって、IT屋の無知無能ぶりには時折愕然とすることがある。自分の業務経験が全ての輩(テメエのしょうもない自慢話が聞きたいんじゃない!)、経理系システムを開発しているのに経理関係を全く知らない輩(おまえさん、どうやって設計書書くつもりなの)、そもそも意味の通らない日本語が書かれたドキュメントを平気で通そうとする輩(小学校からやりなおせ!)、パワポばかり得意で中身は何にもない輩(紙芝居屋でもやったら)エトセトラエトセトラ。そんなロクでもないIT業界にユーザが立ち向かうには、とてもじゃないが、本書だけではどうにもならない。もっと、IT屋を言い負かすだけの知恵(そうだな、情報処理資格を全部取ったら十分だろう)と度胸(総会屋と渡り合えるくらいは必要だ)と人相の悪さ(これ、結構重要なのよ。IT屋って怖そうな客にはマジメに仕事するのよ)があれば、IT屋なんて怖くない。
だけど、そんなものって本当に必要なんだろうか? とちょっとだけ思う。
そもそもIT屋は敵なのか?
ぼくはそうは思わない。本来ユーザが自分自身の業務すらよくわからずに「システム作って」で丸投げして見るも無惨な業務フローになってるケースも、よく見る。IT屋がロクデナシのクズであるのと同様にユーザもロクデナシのクズであるんじゃなかろうか?
IT屋はIT屋で襟を正さねばならない。と、同時にユーザも自分たちの業務を見つめ直す際に、IT屋と話し合いながら本当にシステムが必要なのか考える必要があるだろう。それには当然IT運用屋とも話を詰める必要があるし、IT屋もそれに対応しうる体制にしなきゃいけないはずだ。
本書には残念だけどその答えは載っていない。というよりも、誰もこういった単純だけど面倒なことを考えようともしていない。だけど、本当は「ウチのシステムはなぜ使えない」が重要なのではなくて「ウチの業務はなぜ面倒なんだ」が重要なんじゃないかな。それを考えるきっかけくらいにはなる本だと思う。