伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

ユダヤ人とパレスチナ人(松本仁一/朝日新聞社)


朝日新聞で海外特派員を経験し、現在はフリージャーナリストとなっている著者による、中東における対立を纏めた一冊。
カラシニコフ」や「アフリカを食べる/アフリカで寝る」と同様に、現地に住むひとびとへの徹底した取材に基づくものとなっており、非常に読ませる内容だ。これが書かれた当時、イスラエルのラビン首相とPLOのアラファト議長による暫定自治への合意があり、中東和平への希望に満ち溢れていたということもあって、和平についてとても楽観的な書きぶりとなっている。だが、現状はご存じのとおり。いまだに泥沼のような状況である。
そういう点は確かに減点せざるを得ないのだが、それでもここで書かれている内容もまた真実の一つではあろうと思う。というか、実際に暮らしているひとたちからすれば、ドンパチなんてただの迷惑でしかないのだ。
個人的に興味深かったのがイスラエルの反戦運動団体「ピースナウ」だ。なんと、この団体の構成員はみんな予備役軍人や現役軍人なのだ。もっともこれにはカラクリがあって、イスラエルでは国民皆兵を制度としているから、当然こういう団体の構成員も自動的に軍人ということになる。ただ、現役士官も所属しているし、そもそもの設立経緯が現役の士官たちが連名で当時の首相に「大イスラエル構想」に対して問いただしたものだというのだから、ちょっと面白いではないか。どこかのクビになった某空軍士官は一度読んでみてもいいんじゃないかと思う。
ヨタはともかく、通り一遍の中東について知るのではなく、そこに住むひとたちについて知りたいのであれば一度読んでみることをおすすめする。