伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

オーケストラは素敵だ オーボエ吹きの楽隊帖(茂木大輔/音楽之友社)


N響首席オーボエ奏者の著者によるオーケストラをテーマにしたエッセイ。クラシックをあまり知らなくても楽しめるし、知っていればなおのこと楽しめる、肩の力を抜いた気楽に読める一冊だ。
読んでいて一番「あー」と思ったのが、弦楽器と管楽器の価格格差の話。 弦楽器の場合、それこそ家一軒買える値段なのに対して管楽器の値段は(トッププロが使うものでも)結構たかが知れていたりする。弦楽器の場合、最高峰にストラディヴァリウスというものがあってこれが物凄くシャレにならない値段だったりする上、現代技術では再現できなかったりするあたり相場が青天井で大変なのだ。一方管楽器はというと、高いと言っても楽器の素材を金にする(音の響き的にそっちの方がよかったりするので)といった程度で、さらに言えば楽器の機能的に「最新の機種の方が良い」なんてこともあるのだ。そんなわけで、弦楽器セクションの贅沢さと比較すると管楽器は安上がりというくだりは思わず苦笑いを禁じ得なかったりする。なんというか「あ、あー」という言葉以外にこの感情を言い表すのが難しい。
もう一つ印象深いエピソードを。若いころ著者の奥さんと著者が音楽観を巡ってケンカになる話があるのだが、その中で「ひとつの様式」に「どっぷりひた」ることの大切さを語っているものがある。これは音楽に限った話じゃなくて、何にしてもそうだと思う。そういった「ひとつの様式」に「どっぷりひた」った後は、他の様式の意味も自然と見えてきて理解がしやすくなることは経験上かなりあったりする。
最近は知識や薀蓄ということをとかく軽視する世の中になってきて、とても苦々しく思っている。何かしらの分野で知識の大河にひたることをしないまま、聞きかじりの理屈を振りかざす連中が多いというわけだ
それをとやかく言うつもりは無いのだが、底の浅い人間を量産するようではこの先暗いよな、などと柄にもなく気楽なエッセイを読みながら思ってしまった次第。