伊達要一の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

「事務ミス」をナメるな!(中田亨/光文社新書)

産業技術総合研究所でヒューマンエラー防止の研究を行っている著者による、事務ミスの分析と対策を述べた一冊。
一昔前、製造業というのは3K(キツイ・キタナイ・キケン)職場の典型と嫌われた時代があった。確かにそういったころの製造業は言われても仕方がない有様だったのだ。ところが、今では製造業の方がよっぽど安全対策やらがしっかり施されて、デスクワーク主体の会社の方がよっぽど3Kだったりするという笑えない現実があったりするのだ。実際、製造現場で行われている「ミス対策」と比較してデスクワーク界隈のミス対策というのはお寒い限りだ。そういった現実もあり本書を手にとってみたのだが……
一読した感想としては「ズレている」と言わざるを得ない。もともと、現場系のヒューマンエラー対策をやられてきた方なのだろうか。どうにも事務仕事に対する観点がズレているのだ。例えば帳票についての問題点など、納得できる部分も多少あるのだが、一方で事務作業の実態が見えていない主張も多い。実際、現場仕事関係も「フローチャート」を多用しているというのに「すべてを表であらわせ!」なんて、非現実的もいいところだろう。ここらへん、正直薄っぺらくてがっかりした。
また、やたらと古典からの引用が多いのが鼻につく。どうも「知ったかぶり」をしたい三等管理職が好きそうな構成なのもマイナス。いかにも、部下に「知ったかぶり」をしたいエラいさんが好きそうなことを大量に入れていて中身が薄っぺらというのは、正直サイテーと言わざるを得ない。
一方でとっつきやすいシロモノに仕上げたという点は評価できる。いかんせん、こういった「ミス対策」というのをデスクワーカーに認知させるにはこれくらいわかりやすい必要があるだろう。デスクワーカーというのは(自戒を込めて言うならば)本当にバカでデタラメな存在なのだ。
ちょっとこの界隈について、知ったかぶりをしたいなら読んでもいいかもしれない。ただ、正直に言えば真面目にヒューマンエラーについての専門書を紐解いた方がいいようにも思う。