伊達要一@とうきょうDD954の書棚と雑記

伊達要一の読んだ本の紹介と書評、それと雑記

今日のはてブ(2014/11/02)

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ねとらぼ:「俺、生存なう」 心臓の鼓動をTwitterに投稿する「秋月パルス」 - ITmedia ニュース
[デバイス][ガジェット][twitter][ニコニコ動画][技術][ネタ]病院で危篤状態とかならこれもいいけど、突発的な出来事の場合どうするかは考えたいですよね……

(追記)非常に私事なんですが、以前本当に突発的に死を迎える可能性がある仕事をやっておりました。可能性は本当に低いものの、万が一の際には真っ先に死地に向かわねばならない状況に立ち向かわざるを得ない、そんな仕事です。全くもって割にあわないわけですが、まあ宮仕えの辛さですわな。
で、そんな状況下になった場合少なくとも何かあれば本名は新聞紙面に間違いなく掲載されてしまうので、それをトリガーにして幾人かの信頼できる友人(本名と勤務先を伝えていた)にウェブ上に死亡についての情報を拡散して頂くようにお願いしていました。
正直死んだ後のことは当人には関係ないという考え方もあるんでしょうが、少なくともお付き合いが何らかの形である以上そういった情報を伝えることも、また礼儀だろうと。

そういったケースの場合はトリガーとなる情報があるだろうし、まだある程度情報は拡散するでしょう。問題は突発的な死の場合です。

今回取り上げたものは2009年のガジェットで今はもうちょい洗練された形になっていることでしょう。ただ、それでも本当に突発的な死(例えば交通事故だとか大規模災害)の場合はそんな情報を伝達する手段が無いわけです。

一方でAppleApple Watchという一見ファッション、その実ヘルスケア端末というサービスを始めようとしています。同様にGoogleMicrosoftもこの領域に手を出している。恐らく今回取り上げたガジェットの機能をもっと公的に活用できる形でサービス化するでしょう。それは先日の御嶽山の噴火に伴う大規模遭難だったり東日本大震災のような大規模災害で活用されることになる。

近い未来、恐らく5年後くらいになるとこの手のデバイスを装着して情報をしかるべきところとやりとりすることが半ば義務化されるような気がします。それは法律的な義務というよりも、健康保険や生命保険、就業規則といった非常に厭らしい側面から事実上義務化されるようになるでしょう。これらの情報をもって、災害時の救出やトリアージといった情報に活用されることになる。

一方で、ウェブの世界に対しても情報が連携されるわけです。どのような文言を設定するかは個人次第だけど、大規模な災害で多数の方が亡くなるような状況下twitterのタイムラインにその手のメッセージが大量に流れることを想起すると、無論それは情報の伝達という意味では大事なことだけど非常にディストピア的な光景に思えてなりません。

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今日のはてブ(2014/11/01)

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継続はなんとやらと言いますが、まさか3ヶ月も続くとは思わなかった。どっかで飽きて更新が止まるとばかり思ってたので、いやはやこのスタイルが性に合っていたということなんでしょうね。
……はいそこ後付更新を乱発していたとか言わない。


Surface versus iPad: A tale of two tablets? | ZDNet
PC, iPad, Apple, Microsoft, Surface, タブレット, スマートデバイス, IT
PCはある種のマザーマシンとして残り続けるでしょ。一方スマートデバイスは今よりも使われるってのも言われる通り。ちなみにSurfaceディスコン説が一部で出てるけど、ここまで稼げるようになったら手放さないでしょ。


How the Surface Pro 3 changed the way I work | ZDNet
PC, タブレット, Surface, Microsoft, スマートデバイス, キーボード
ただ一方でぼく個人としてはSurfaceはキーボード部分に不満がありすぎるので選択肢としては無いな。もちろん気に入ったキーボードを持ち歩けばいいだけなんだけど、やっぱり面倒。

(追記)はっきり言えばZDNET提灯記事です。
ただ、個人のコンピュータ利用をするためのデバイスについては、確かに大きく変動しているのは事実です(とは言え、現実には規模こそ異なれ常に動いてはいたんだけどね)。今のスマートデバイススマートフォンタブレット)はかつてごくごく一部のエンスージアストだけかもしれなかった、PDAやプレなスマートフォンW-ZEROやEM ONEね)とは異なる幅広い利用のされ方であることは間違いない。

一方で非常に誤解されがちではあるんですが、PCというデバイスは決して無くなることはないでしょう。無論利用のされ方は異なってくるだろうけど、無くなるということは決してありえない。なんとなれば、スマートデバイスで利用するコンテンツは大概PCというデバイスによって作られる。位置付けとしてはある種のマザーマシンのポジションに変わるんでしょう。

私の場合キーボードというインプットデバイスをあまりに多用するので、ここがダメなデバイスにはとても耐えられないです。Surfaceは身近にゴリゴリ使っている連中が居るのを見ていることもあり、便利そうだとは思うんですが、あのキーボードを使うくらいなら私はpomeraを使います。あのキーボードはオモチャ以外の何者でもない。

これからのノートPCを考えたときに、キーボードやポインティングデバイス(実際Appleがかなり頑張っている。Lenovoはせっかくアキュポイント持っているんだからもっと頑張れ)へのこだわりというのが非常に重要になってくると思いますね。個人で仮想化検証みたいなアホの所業(うん、ぼくのこと)をするんでも無ければ基本的にマザーマシンとしての仕事はノートPCで事足ります。まだまだゲームというところは厳しいけど、CPUリソースの活用というところがグラフィックに敷衍してくればここの問題も恐らくそう遠くないうちに解消することでしょう。またはDELLがやったようにグラフィックの部分だけ外出しにするなんて手法も今後増えてくるかもしれない。

そういったときに、単体で利用するときのインプットデバイスの重要性は逆に高まるのではないかと思う次第です。

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空洞化を超えて(関満博/日本経済新聞社)


中小企業研究で著名な、明星大教授である著者による、いわゆる「空洞化」問題について解説と提言を行った一冊。
著者は中小企業の現場に密着した調査に定評があり、本書でもそういった視座に基づく議論を展開している。一般に空洞化というと雇用という観点からの議論が中心になるが、それと同時に発生している「技術」や「地域」の「空洞化」という極めて示唆的な着目点で論を展開しているのは、かなりアイ・オープナーなものだと思う。
本書が刊行されたのが1997年と少し前なこともあり、ここで述べられているのは一昔前の内容かもしれない。今日では日本企業が中国やASEAN諸国での生産を行うのが至極当たり前のことになってしまっている。しかし、その背景として日本国内の産業構造がどのようになっているのか? ということを知っておくのはとても有用なことだと思う。そういう意味では是非一度手にとってみて欲しい。

プロローグ 空洞化の連立方程式
第1章 産業空洞化をどうみるか
 1 マクロ的な空洞化論の限界
  (1) プロダクト・サイクル論は妥当か
  (2) 付加価値の高い産業とは
 2 もう一つの「産業空洞化論」
  (1) 技術の「空洞化」
  (2) 地域の「空洞化」

第2章 マニュファクチュアリング・ミニマム
 1 技術の集積構造とその空洞化
  (1) 技術集積の三角形モデル
  (2) 産業構造転換を支える基盤技術
 2 マニュファクチュアリング・ミニマムとは何か
  (1) 技術の組み合わせとしての「ミニマム」
  (2) 「ミニマム」の維持と展開

第3章 産業構造分析の新たな視角
 1 技術基盤をベースにする産業分析
  (1) 従来の産業分析の顕界
  (2) 加工機能に着目した機械工業分析
 2 加工機能による企業類型
  (1) 製品開発型企業の叢生
  (2) 重装備型企業類型の現在
  (3) 機械加工型企業類型の展開
  (4) 周辺的機能の拡がり
 3 加工機能とマニュファクチュアリング・ミニマム
  (1) 加工機能の欠落とモノづくり
  (2) 地域とマニュファクチュアリング・ミニマム

第4章 「地域空洞化」と「技術空洞化」は防げるか
 1 地域産業の技術集積の諸問題
  (1) 大規模企業城下町の困難
  (2) 地域産業の困難
  (3) 誘致企業の動向に揺れる地方小都市
 2 マニュファクチュアリング・ミニマムの模索
  (1) 室蘭と京浜地区のリンケージ・プラン
  (2) 地域技術の高度化
  (3) 地域工業の構造調整後の図式
  (4) 「ミニマム」を確保、形成していくための課題

第5章 新たな東アジア分業と技術移転
 1 地域中核企業の海外進出
  (1) 進出大企業と地域中小企業の関係変化
  (2) 海外進出と地域経済への影響
 2 アジア進出の新局面
  (1) 「輸出組立基地」としてのアジア
  (2) 「中国の事情」の変化
  (3) 「市場」としての中国
 3 産業システムの移管
  (1) 電子部品メーカーの中国進出
  (2) 産業システムの移管が意味するもの

第6章 東アジア各国地域の自立化と日本産業
 1 対中自動車交渉に学ぶもの
  (1) 中国の自動車政策
  (2) 国産化への協力
 2 アジア各国の技術構造とネットワーク
  (1) 中国の「技術」に対する評価
  (2) アジア各国地域の技術構造
  (3) ネットワークとマニュファクチュアリング・ミニマム

エピローグ 「モノづくり」と「人づくり」

フルセット型産業構造を超えて(関満博/中公新書)


中小企業研究で知られる明星大教授の著者による、日本の産業構造の転換とそれに伴う東アジア諸国との工業技術ネットワークの形成について論じた一冊。
書かれたのが1993年とこの手の本としてはだいぶ昔に感じるところではあるが、述べられている内容は今でも十分読むべきだと思う。特に、3Kと敬遠されがちな鋳造、鍛造、メッキなどの業種をはじめとした「基盤的技術」領域で歯槽膿漏的崩壊が始まっているという指摘は、今でも続いており当時よりもさらに厳しい環境にあるという理解でいいだろう。
著者は中小企業の現場に身を投じて、現場の息づかいが感じられるような報告を数多く著しているのだが、本書もそれが極めて濃厚だ。とはいっても、新書という媒体だけあって、比較的一般向けに読みやすく薄めてあるからご安心を。特に大田区の工業集積とその現状については、こういった分野に関心がある向き以外にも一読して欲しい。テレビや新聞で、円高不況=大田区の中小企業が苦しむという報道が若干ズレたものだということに気づくことができるだろう。
また、著者の三角形モデルは必見。これもよく報道でわかったようなふりをしているシロモノを目にするが、これほどまでに明確に日本の産業構造を著しているモデルはたぶん、無いだろう。韓国経済オワタ論なんかをネットでよく目にするけども、彼らもまたこういった産業構造をよく理解せずに受け売りでしゃべっている連中が多い。是非とも本書を読んで、自分たちが話している内容と実際の構造の差異を学ぶといい。
大学で経済学や経営学を学んでいるひとたちには是非読んでもらいたい。また、産業構造ってなんだろう? という興味がある高校生にもオススメ。ちょっと難しめではあるし、内容的にも高度だとは思うが、読み応えは十分。この分野について、そんじょそこらの大人よりも真っ当な知識を得られることを約束しよう。

空洞化のウソ(松島大輔/講談社現代新書)


現在タイ政府政策顧問として出向中の経産官僚の著者による、中小企業の海外進出をプロパガンダする一冊。正直、あまり評価できるものではない。
まず、第一に、なんでこの分野の先行研究である関満博の本が入ってないの? この時点で色々と胡散臭さが漂う。著者が東南アジアを中心とする「新興アジア」を中心に語りたいので、中国についての文献は要らないというのはご勝手だけども、先行研究をよくよく調査しないで物を語るというのはどうにも評価できない。そこらへんのうかつさは本書には随所に見られる。例えば、「新興アジア」への進出によって雇用が増えるというような話を書いているけども、関満博の「東日本大震災と地域産業復興II」(新評論)によれば、中国や東南アジアへの転注によって人員をピークよりも減らしているという現場からの証言がしっかり載っている。著者も根拠レスに語っているわけではないので「大嘘」とまでは言わないが、一面的にすぎるのは否定できない。
では、現場からのヒアリングに基づくものかといえばそうでもない。正直こちらもお粗末極まりない。ぼくレベルですら、資料を引っ張ってきてひっくり返せてしまうような話に終始してて、こちらもお話にならない。残念ながら「本代と時間を返せ!」と壁に投げつけるレベルと言わざるを得ない。
一方で、著者が述べるような海外展開というのは間違いなく必要なことだ。それは否定しようが無い事実だとぼく自身も思う。ただ、物の見方があまりに楽観的で無責任に過ぎる。経済産業省の立場、タイ政府政策顧問の立場で「新興アジア」への進出を旗振りしたいのはわかる。そしてその重要性もだ。ただ、現実に経済産業省JETROといった外郭団体がまともに役立ったと言う話は、残念ながらあまり耳にしない。現状はかつての「棄民」政策よろしく当局が何一つ日本企業をバックアップしない状態が続いている。そして、うまくいった事例を振りかざしてこんな本を書かれると正直とさかに来ることおびただしい。
経済産業省がその前身の通商産業省時代も含めて「一発屋政策官庁」と揶揄されて久しいが、残念ながらその一発屋ぶり、無責任ぶりが浮き彫りになる一冊。今のご時世、東南アジアへの投資も通りやすいだろう。この本で得られる知識もそれほど必要とは思えない。とても残念な一冊だ。